「パーフェクトデイズ」

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早朝、外を掃除するほうきの音で目を覚ます。

敷布団と掛け布団をたたむ。

台所で歯を磨いて、小さな鏡でヒゲを整える。

口ひげの先はハサミで整え、あごはシェーバーで剃るらしい。なるほど。

 

2階建てのアパートらしい。入口の棚に、鍵と小銭など。

自販機で缶コーヒー?を買ってミニバンでお仕事。

「The Tokyo Toilet」と書かれたつなぎを着て、公共トイレのお掃除です。

渋谷区に有名クリエーターがデザインした17のトイレのメンテナンスとお掃除をする団体のようです。

テキパキと、丁寧に、便器の裏側は手鏡でチェック。

 

仕事が終わると公園のベンチでサンドイッチの昼食。

小さな紅葉の芽が出ているのを見つけて、愛おしそうに採集していく。

新聞紙で小さな箱を折ってポケットに入れてある。(英字新聞だった!)

木漏れ日をフィルムカメラで撮って写真店で現像。

カメラに新しいフィルムを入れた時の巻き取る音が心地よい。

 

ブリキのバケツに入れた水で新聞紙をちぎって濡らし、畳に撒いてほうきで掃く。

浅草地下駅の居酒屋でハイボールがおきまり。

スカイツリーをみながら自転車で帰宅。

 

同じような毎日、同じようなシーンが繰り返される。

でも、時々ミステリアスな事件。

「おじさん」と家出してきた少女は姪なのかな。

運転手付きの高級車で迎えに来た女性(麻生祐未)。

「あなた、これ、好きだったでしょう」小さな紙袋を渡す。

「お父さんに顔を見せに行って。もう分からないかも知れないけど」

そして、ハグして別れる。誰?妹?元妻?お金持ち?

ずっと謎のまま気になってます。

 

淡々とルーティンをこなしながら幸せそうな毎日。

何事も起きないって幸せなんだぁと実感しました。

 

本編の前に放映される映画の予告編は過激なのばかり。

静かな映画は良いものです。

能登半島地震で無惨な光景はたくさん見てしまいましたからね。

 

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お蕎麦が食べたくなって、三種盛り。天ぷらと大根おろしと山菜のトッピングを注文。


「録画を消す前に『男はつらいよ寅次郎あじさいの詩』」

昭和57年(1982年)作品

葵祭で、鴨川沿いに露店を出していた寅次郎、下駄の鼻緒が切れて困っていた老人を助けてあげる。

お礼に…という老人についていくと、路地の奥の料亭に入っていく。

「ジイさん!勘違いしてんじゃないか!こういう店は高いんだぞ!」

仲居が出てきて、「いやぁ、センセ!お久しぶりどすぅ」

座敷では芸妓たちも加わって、老人は酔っ払って焼き物の話を熱く語る。

寅次郎はちんぷんかんぷんのまま酔いつぶれる。

 

立派な部屋で目を覚ました寅次郎。

老人は人間国宝の陶芸家・加納作次郎。

寅次郎、全然理解してない。

「茶碗焼いてるだけでこんな家に住んでるなんて、じいさん何か悪い事してんじゃないかあ」

加納作次郎先生、苦笑い。

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女性グループが見学に来た。

寅次郎、喜んで招き入れて、顔を出した作次郎を座らせて「じいさん、笑って、笑って。」

 

 

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「世話になったお礼に、茶碗をもらってくれ」

箱を準備するからというと「かさばるからこのままでいいよ」とひょいひょい放り投げる。

周りで弟子が「美術館で欲しがっていた作品なのに。」とハラハラ。

作次郎「ええがなええがな、いずれは焼き物は壊れるもんじゃ。」

 

マドンナはいしだあゆみ。

いつものとおり、ちょこっと恋があって破れて…。

 

加納作次郎役はこれも人間国宝の歌舞伎俳優13代目片岡仁左衛門(1903〜1994)

撮影場所は京都五条の河井寛次郎記念館。

以前行った時(2015年3月)、館内を案内してくださった方に「ひょっとして寅さん撮影しましたか?」と聞きました。

家具の配置などはちょっと違ったようですが、見覚えのある風景でした。


「銀河鉄道の父」

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『銀河鉄道の父』、見てきました。

主役は宮沢賢治の父親、政次郎。当時こんな甘々の父親がいたのかな。

幼い賢治が赤痢になると、母親を押しのけて父親が付き添って、せっせと世話をする。

宮沢賢治は『雨ニモマケズ、風ニモマケズ…』のイメージから聖人君子だと思っていたけど、質屋の家業を嫌って農学校へ進学して中退して帰ってきたり、人造宝石を作るからと親に出資を頼んだり、日蓮宗にのめり込んで団扇みたいな太鼓を叩いて大騒ぎしたり、とんでもない息子です。

「日本のアンデルセンになる」と童話を作って出版するが全く売れず、自費出版はどさっと返却されてくる。

応援してくれた妹トシが結核で療養すると、賢治はトシを喜ばせようとせっせと童話を書いて読んで聞かせる。

 

賢治の振る舞いに振り回される役所広司の父親が楽しい。

賢治の申し出に当惑しながらも認めてしまう。

菅田将暉の賢治は髪を丸刈りにして熱演。

最愛の妹の葬儀に、「ナンミョウホウレンゲキョー!」と太鼓を叩きながらすごい迫力で日蓮宗の法華経を唱えて回る。

「うちは浄土真宗じゃ…」親戚が心配すると父親は「いいんだ、あいつの送り方で…」。

 

トシ役の森七菜、可愛いだけの女優さんかなと思っていたけど名演技。

衰弱して亡くなるまで演技も壮絶。

旧家の風景に溶け込む坂井真紀の母親の佇まいが美しい。

賢治は農民の役に立ちたいと農業を研究して指導者になるが、トシと同じ結核に倒れてしまう。

控えめに見守っていた母親も、賢治の最後には「私に体を拭かせてください」と母親の覚悟を見せる。

 

家族全員が愛に溢れた人たちでした。

 

 

 

 


「WORTH  命の値段」

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市内の映画館で『WORTH  命の値段』見てきた。

2001年9月11日 アメリカ同時多発テロの被害者と遺族を救済する政府の補償基金プログラム。

調停のプロを自認する弁護士ファインバーグが特別管理人になる。

約7000人の対象者を収入で換算すれば良いと思っていたが、大会社の重役と労働者、勇敢に闘った消防士、それぞれに家族があり人生がある。喪失感や悲しみに差はあるのか。プログラムに反発する活動も勃発する。

同性婚で被害者と愛し合っていた男性には補償は無く、断絶していた親に払われる矛盾。

消防士の妻は、勇敢だった夫の生命をお金に換算されるのはたまらないと申請を拒否する。

女性弁護士が、被害者と接して、夜の事務所で一人で泣いていた。

ケネス・ファインバーグの回顧録をもとにした実話です。

 

先日 聴覚障害のある小学生の死亡事故で損害賠償を求めた両親に対し、障害を損失利益として女性労働者平均の40%と換算したという記事を読んだ。

「聴覚障害者への差別ではなく、思考力・言語力・学力を獲得するのが難しく、就職も限られている」

 

一人の人間として扱ってほしいと両親は民事裁判を起こしました。

支援する女性弁護士も聴覚障害があり、補聴器をつけて活動。

エンジニアやIT関係など活躍している障がい者は大勢いる

障害が損失利益になるのだろうか。

 

映画を見る数日前に読んで気になっていた事例。

障害があるからこそ大切に育てたかもしれない。

障害があるからこそ頑張って生きていたかもしれない。

命に値段をつけるのは難しい。

 

 


「ある男」

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映画『ある男』見てきました。

 

弁護士の城戸(妻夫木聡)は里枝(安藤サクラ)から不慮に事故で亡くなった夫大祐(窪田正孝)の身元調査を頼まれる。

疎遠になっていた大祐の兄が法要に訪れ、「遺影はないんですか?」。

「これ遺影ですけど…‥」「これ、大祐じゃないです。」

離婚した前夫との息子にも良き父親として慕われ、里枝との間には女児も生まれ、幸せに暮らしていたのに、夫は名前もわからず、Xさんとして調査を始めるしかない。

彼が誰なのかわからなければ、死亡手続きも出来ず、名字の変更にも戸惑う。

確実なのはともに暮らし愛し合い、4年間ほど家族で楽しく過ごした事実。

何がなんだか分からないで、もやもやしながらスクリーンから目が離せなくなる。

 

ストーリーの根底に犯罪者の家族や在日コリアンの差別問題。

(他の誰かになれたらな)と思ったことがなかったとは言えないし。

戸籍がなければ存在も怪しくなる現実。

 

中学生の長男が健気。

(お父さんがいなくなって)「もう悲しくないけど…寂しい…」

「お父さん、大好きだったものね」

里枝が抱きしめると初めて泣きじゃくる。

 

静かな映画ですが、日本アカデミー賞、受賞したそうです。

安藤サクラの演技、いいな。

悲しいシーンでも不安なシーンでも、静かに心情を演じる。

 


「イチケイのカラス」

映画「イチケイのカラス」見てきた。

菊之助くんが弁護士役(?!)

テレビドラマも結構好きでしたから。

竹野内豊と黒木華の裁判官役の軽妙なやり取り、やっぱり楽しい。

でも、わざわざ映画にすることもないようなストーリー。

1時間のドラマのほうが面白いよな。

せっかくの菊之助くん、正義の味方じゃないし…。

 

久しぶりに友人と行って、パステルのランチ。

パスタ、ブイヤベース、キッシュ、ちょこっとずつ選べるランチプレートで幸せ。

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「土を喰らう十二ヶ月」

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映画、『土を喰らう十二ヶ月』見てきた。

 

作家のツトムは白馬村の山荘で一人暮らし。

雪の中からほうれん草を掘り出す。

寺の小僧の頃は洗うのが面倒で切り落としていた根の部分。

和尚が「一番美味しいところなのになぁ」と言っていた。

 

小芋を樽に入れて木の十字架のようなものでかき回す。

ちょうどよく皮がこそがれる。

炭火で焼いただけで美味しい。

恋人の?真知子役、松たか子がホクホク食べる。

「土の味なんだ!」

 

掘りたての筍を薄味で煮て大鉢に入れサンショの若芽を大量に乗っける。

大ぶりに切った筍を二人が噛みつくように食べる。

「お汁も入れて」

気づいたら松たか子さん、手づかみで食べてた。

演技なのか自然にそうなったのか。

 

「寒かったろう」と囲炉裏端で盆点前ふうの抹茶でもてなす。

お菓子は干し柿。こんなおもてなしも良いなあ。

 

急に義母の葬儀を山荘で営むことになり、寺で修行した経験のあるツトムが通夜振る舞いの料理をつくる。

割烹着で手伝う真知子さん。

「ごまをすって!」「はいよ!」「夕顔の実、とってきて!」「はいよ!」

ツトムの指図でキビキビ動くのが小気味好い。

 

愛犬サンショ(日本犬だけど雑種かな)

心筋梗塞を起こして入院した飼い主を山荘で待ちわびる姿が健気で可愛い。

散歩、どうしてるんだろう、餌、どうしてるんだろう…と心配になる。

 

最後の方で亡妻と義母の骨壷が無くなっていた。

何かを砕き潰して、きれいな湖の小舟の上から何かの粉をまいているシーンが有った。

散骨したのかなあ、許可されてる場所なのかなあなんて気になる。

 

輪切りにした大根を煮て、ゆず味噌をかける。

美味しそう😋。

でもあんなにたくさん煮た美味しそうな大根、残ったのはどうしたんだろう。

(お膳にのってたのは一つだけ)

 

ツトムを演じるのは若かりし頃のスーパースター、ジュリーの沢田研二。

ぽっちゃりおじさまで面影はないけど、存在感はさすが。

でも……もう少しダイエットして欲しい😂。

 

タイルの流しの洗鉢も陶器。登場する器がどれも素敵。

ただ映像の美しさと時の流れを楽しめば良いのだけど。

ただ静かに眺めながら、どうでも良いことを考えるのも面白い。

 


「長崎の郵便配達」

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映画『長崎の郵便配達』見てきました。

ピーター・タウンゼント氏はイギリス空軍を退官してジャーナリストになり世界中を旅します。

長崎で被爆者の谷口すみてる氏と出会い、ノンフィクション小説『THE POSTOMAN  OF NAGASAKI 』を発表します。

谷口氏は16歳の時に郵便配達中に被爆し、背中に大やけどを負い、1年9か月うつぶせのまま闘病、床ずれで腹部の肉もこそげ、3年9か月入院したそうです。

その後郵便局に復帰、自らの肉体をさらして世界に核廃絶を訴えていました。

タウンゼント氏の死後、娘のイザベラ・タウンゼントが父親の著書を紐解き、長崎での足跡をたどります。

 

ピーター・タウンゼント氏はエリザベス女王の妹マーガレット王女と恋に落ち破局。映画『ローマの休日』のモチーフになったと言われる。

なるほど、タウンゼント氏、ハンサムです。

映画の中で父親の足跡を追い、すみてる氏の遺族にも会うイザベルさんはも若いときにはモデルとして活躍、今は母であり女優でもあるという。素敵な女性でした。

 

長崎の町は本当に石段が多い。

郵便配達だった16歳のすみてるさんは自転車を担いで登って配達したそう。

大変さ、想像を絶する。この体力と根性が過酷な闘病から復活の原因のひとつかな。

被爆した身体の傷跡を自分の子供たちに見せ「自分は悪いことはしていない、だからこの体を恥じることは無い」と堂々としていたそうです。

差別されて難しかった被爆者の結婚、すみてる氏が明るく健康な奥さまを得られたことは本当に良かったです。

子供たちも健康に生まれて育ち、イザベルさんは長崎の精霊流しにすみてる氏を送る精霊船を一緒に運びました。

 

16歳のすみてる氏、郵便配達中に子供たちが「すみてる!」と呼び掛け、その瞬間閃光を浴び、黒煙の中に散って落ちてきた白いものがその子供たちだった。

大やけどのすみてる氏に油を塗ってくれた女性、背負って防空壕まで運んでくれた男性、そしてその人たちも防空壕で死んだらしい。そんな状態でも助けた人がいたことに感動。

 

何だか細切れの感想です。淡々と長崎の風景を歩く静かな映画でした。

 

 


「映画『ひまわり』」

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街の小さな映画館で『ひまわり』見てきました。

 

第二次大戦下、陽気なアントニオ(マストロヤンニ)とジョバンナ(ソフィア.ローレン)は結婚する。

アントニオはソ連戦線に送られる。

戦争が終わってもアントニオは帰らない。

ジョバンナは生存を信じてソ連に渡り夫を探す。

広大なひまわり畑は戦争で死んだ兵士や犠牲者を埋めた大地。

延々と続くひまわり畑、いくつもの丘に続く墓地。

ロシア(当時ソ連)のなんと広大なこと。

やっと探し当てた夫には若い妻がおり、小さな娘までいた。

凍てついた荒野を行進して死ぬ寸前のアントニオを助けた女性だった。

ソフィア・ローレンの存在感、さすが。

リュドミラ・サベーリエワの若い妻が可憐。

マルチェロ・マストロヤンニは2人の女性の間でオロオロ。

マストロヤンニはこんな役が似合うな。

アントニオは妻に勧められてイタリアに行くが、ジョバンナは「お互い年をとったのよ」と別れ、汽車を泣きながら見送る。

 

洋画に疎い私も映画音楽とひまわり畑のシーンは知っていました。

でもひまわり畑が膨大な数の死者が埋葬されているシーンとは知りませんでした。

戦闘シーンは多くないけど、凍てついたソ連の平野を歩く兵たちが次々と倒れるシーンは十分惨い。

 

広大なひまわり畑はウクライナで撮影したそうです。

50周年HDレストア版。

興行収益の一部はウクライナの人道支援に寄付されるそうです。

 

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世界ふれあい街歩き、2019年のキエフの街の風景。

鮮やかな色彩の美しい町並み。

人々の明るい笑顔。

ニュースで見るキエフは灰色の閑散とした風景。

映像に映った方たち、ご無事でしょうか…。

 

 

 


「ドライブ・マイ・カー」

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話題の映画『ドライブ・マイ・カー』見てきた。

 

演出家の家福悠介の妻がくも膜下出血で急逝する。

理解しあった夫婦と思っていたが、妻には〈男〉がいたようだ。

疑問を持ったまま2年が経ち、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』の演劇を演出する。

作品は、日本語、英語、韓国語、手話でそれぞれの役を演じる。

 

とても長くて(3時間近く)静かな映画で途中でウトウト(~_~;)。

途中でドカンと大きな音(発砲?)。

観客が眠くなるころで、目を覚めさせるため演出?

そして後半、だんだんと引きこまれる。

緑内障を患う家福は、専属の女性ドライバーを雇う。

彼女も心に傷を持っていた。

 

「仕方ないわ。生きていかなくちゃ…。長い長い昼と夜をどこまでも生きていきましょう。

そしていつかその時が来たら、おとなしく死んでいきましょう。」

最後の劇中シーンで、女優がきれいな手話で語るセリフ。

ワーニャ伯父さんは、これが言いたかったのか‼

胸にストンときて、それから泣きそうになりました。

 

テレビやビデオでこの映画を見ていたら飽きちゃうだろうな。

映画館で見なくちゃもったいない映画だよな。

主役の西島秀俊氏、いつもはテレビドラマで見ることが多いけど、スクリーンでも大きな存在感。

朝ドラで着物姿のお茶の先生を演じている三浦透子が飾り気のない衣装の不愛想なドライバー。

 

村上春樹原作かあ…チェーホフも読んだことがないしなあ。

映画を見た翌日アカデミー賞授賞式。

この作品が国際長編映画賞でした。

たぶん良い映画なのよね。

見ておいてよかったです。

 


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